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名古屋地方裁判所 昭和57年(ワ)1034号 判決 1992年1月31日

愛知県東海市横須賀町浜屋敷九番地の一

原告

建部洋

熊本県宇土市松山町一八五八番地の二

原告

西部産業株式会社

右代表者代表取締役

山下均

福岡県山門郡三橋町簀町九九〇番地

原告

川島定美

右三名訴訟代理人弁護士

佐治良三

太田耕治

建守徹

渡辺一平

福岡県柳川市大字本町六八番地の四

被告

竹下産業株式会社

右代表者代表取締役

竹下俊造

右訴訟代理人弁護士

吉野高幸

右訴訟復代理人弁護士

中尾晴一

右輔佐人弁理士

松尾憲一郎

主文

一  被告は、別紙物件目録記載(一)のイ号機械及び同目録記載(二)のロ号機械を生産し、使用し、譲渡し、貸し渡し、又は譲渡若しくは貸渡しのための展示をしてはならない。

二  被告は、イ号機械及びロ号機械(完成品)を廃棄せよ。

三  被告は、

1  原告建部洋に対し、金三〇一四万円及びこれに対する昭和五七年四月一〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告西部産業株式会社に対し、金一九四万円及びこれに対する右同日から支ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  原告川島定美に対し、金六八八万円及びこれに対する昭和五九年八月二三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告らのその余の請求をいすれも棄却する。

五  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告らの、その余を被告の各負担とする。

六  この判決のうち金員の支払を命ずる部分は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  原告の申立

一  主文第一項及び第二項と同旨。

二  被告は、

1  原告建部に対し、金八五六二万五〇〇〇円及びこれに対する昭和五七年四月一〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告西部産業株式会社(以下「原告会社」という。)に対し、金一九八七万五〇〇〇円及びこれに対する右同日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  原告川島に対し、金七七〇万円及びこれに対する昭和五九年八月二三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え(内金請求)。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  金員の支払を命ずる部分につき仮執行宣言。

第二  事案の概要

本件は、原告らが被告に対し、特許権侵害を理由に侵害行為の差止等及び損害賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  原告らの特許権

(一) 本件A特許

(1) 原告川島は、左記特許権(以下「A特許」といい、その特許発明を「A発明」という。)につき単独で出願し、昭和五六年一〇月六日、特許を受ける権利の一部を原告建部及び原告会社に譲渡し、昭和五七年二月一五日、特許庁に出願人の名義を原告ら三名に変更する旨の届出をして受理され、原告ら三名はA特許を共有している。

発明の名称 海苔剥ぎ機

出願日 昭和五一年一〇月一二日

出願公告日 昭和五六年四月二〇日

登録日 昭和五八年一月一七日

登録番号 第一一三〇三四五号

(2) A特許請求の範囲

A発明の特許出願の願書に添付した明細書の「特許請求の範囲」の記載は、別紙(一)特許公報(甲一)の該当欄記載のとおりである。

(3) A発明の構成要件

A発明は、特許請求の範囲第1項ないし第3項からなるものであるが、各項の構成要件は、それぞれ次のとおりである。

<1>A 多孔移動ベルト6を機枠1に支持し、

B 同ベルト6の上面に空気吸引口7を接し、

C 同ベルト6及び空気吸引口7の直下に同ベルト6の移動方向と逆方向に向かって移動する海苔簀牽引爪15を機枠1に設けて

D なる海苔剥ぎ機。

<2> 海苔簀牽引爪15を無端回動ベルト10に設けた特許請求の範囲第1項記載の海苔剥を機。

<3> 多孔移動ベルト6の移動速度よりも海苔簀牽引爪15の移動速度が大である特許請求の範囲第1項記載の海苔剥ぎ機。

(4) A発明の作用効果(甲一)

従来抄着海苔が牽引される方向と同一方向に海苔簀を牽引したので抄着海苔が破れる率が高く海苔剥ぎ機を実用化し難い欠陥があったが、A発明は、海苔38を簀37から剥ぎ取るに際し、抄着海苔38に圧縮力が作用するので、海苔38に裂傷を発生するおそれがなく、自動的多量に抄着海苔38を簀37から円滑確実に剥ぎ取り得る効果がある。

(二) 本件B特許

(1) 原告建部は、左記特許権(昭和五五年五月三一日付け手続補正書によって補正された後のもの。以下「B特許」といい、その特許発明を「B発明」という。)につき単独で出願し、昭和五五年八月四日、特許を受ける権利の一部を原告会社に譲渡し、同月七日、特許庁に出顧人の名義を原告建部及び原告会社の両名に変更する旨の届出をして受理され、右両名はB特許を共有している。

発明の名称 海苔・す分離装置

出願日 昭和四六年一〇月一日

出願公告日 昭和五四年八月七日

登録日 昭和五六年一〇月三〇日

登録番号 第一〇七一〇三四号

(2) B特許請求の範囲

B発明の特許出願の願書に添付した明細書(後に補正されている。以下「B明細書」という。)の特許請求の範囲の記載は、別紙(二)特許公報及び別紙(三)訂正公報(甲三、一三)の該当欄記載のとおりである。

(3) B発明の構成要件

B発明の構成要件を分説すると次のとおりである。

A 簀送り用のコンベヤ上に載置されて送られてきた海苔が付着した簀を、簀は進行方向と反対の方同に転換させて移送し、海苔は進行方向へ送り出して、簀から海苔を分離する装置において、

B 簀送り用のコンベヤ1の一端側上部に孔あきエンドレスベルト15の一端側を重ねておき、

C 重ね部分側のコンベヤ1の端部ローラ6上方の孔あきエンドレスベルト15の下部走行部上に真空吸引装置12を配設すると共に、

D 該真空吸引装置12の前方の下部走行部下に海苔送りローラ16を設けたこと

E を特徴とする海苔・簀分離装置。

(4) B発明の目的、作用効果(甲三、一三)

原告建部が先に出願したところの、真空吸着して海苔を剥離、送給するのに孔あき回転ドラムを使用したものにおいては、海苔の簀よりの剥離後の送り出しがスムーズに行かない難点があった。この発明は、更に有効な真空吸着手段によって海苔の剥離と送給を確実に行うように改良したものである。

この発明は、簀の屈折部上方に真空吸引装置を設け、海苔送りローラ16で剥離後の海苔を送るようにしたので、海苔に傷をつけないで送給することが確実に行えるようになった。

2  被告の行為

被告は、昭和五三年九月以降、「はぎスター」との商品名で別紙物件目録記載(一)(イ号機械)及び同(二)(ロ号機械以下、両機械を合わせて「被告機械」という。)の機械を製造販売している。

二  争点に関する当事者の主張

1  被告機械はA特許を侵害するか(争点1)。

(一) 原告ら

(1) 被告機械は、

a 多孔移動ベルト6を機枠1に支持し、

b 同ベルト6の上面に空気吸引口7を接し、

c 同ベルト6及び空気吸引口7の直下に同ベルト6の移動方向と逆方向に向かって移動する海苔簀牽引爪15を機枠1に設けて

d なる海苔剥ぎ機

であり、A発明の構成要件<1>のAないしDのすべてを充足するのであるから、A発明の技術的範囲に属する。

被告は、被告機械には「海苔簀下降誘導装置9が空気吸引口の前端に從方向の誘導杆として垂設されている」と主張するが、これは誤りであり、正しくは、多孔ベルト6の両側に設けられている。なお、海苔簀下降誘導装置9はA発明とは関わりのない構成である。

また、被告機械は、A発明の構成要件<2>及び<3>のいずれについても充足している。

(2) 被告が後記被告実用新案権を有しており、これがA発明を利用する関係(実用新案法一七条)にあることは認めるが、被告主張の裁定実施権なるものは、特許庁長官の裁定によってのみ生ずるのであるから、裁定のない段階でこれを議論することは意味がない。のみならず、被告機械は、被告実用新案権を実施したものではないから、被告機械についてA特許についての裁定の効果が及ぶことはあり得ない。すなわち、被告機械は、少なくとも被告実用新案権の「<1>折返し部は、水平移行してきた海苔簀の両端部を、先端が屈曲した折返し案内杆の先端屈曲部で受止めながらガイドして反転せしめるべく構成。<2>回動チェーンには係止爪を連設し、剥ぎ取り移行部の終端迂回部において、係止爪が海苔簀との係合を解くべく構成。」との構成を欠いている。

(二) 被告

(1) 被告機械は、A発明の技術的範囲に属しない。

A発明は、「空気吸引口7の直下に・・海苔簀牽引爪15を機枠1に設けること」「海苔簀牽引爪15を無端回動ベルト10に設けること」を要件としているが、右海苔簀牽引爪15は、海苔を剥離した後の海苔簀を牽引するための爪であるから、空気吸引口7の直下で海苔簀を牽引できる状態になければならず、単に空気吸引口7の直下に回動しながら位置しているだけではA発明の構成要件を充足しないものと解すべきところ、被告機械において、海苔簀を牽引する状態での牽引爪は空気吸引口の直下にはなく、その前端にしかない。すなわち、被告機械においては、海苔簀下降誘導装置9が空気吸引口の前端に從方向の誘導杆として垂設されており、この誘導杆により誘導垂下する海苔簀を牽引爪が牽引するようにしているのである。

A発明は、空気吸引口の直下に海苔簀牽引爪を配設したことにより、簀の吸引搬送をした後に爪による引っ掛けを行うのに対し、被告機械においては、先に簀に爪で引っ掛けた後に海苔のみを空気吸引口を有するベルトで吸引搬送するのであるから、両者は構造を全く異にしており、被告機械は、A発明の技術的範囲に属しない。

(2) 仮に、被告機械がA発明の技術的範囲内にあるとしても、被告は、A発明を利用した次の実用新案権(以下「被告実用新案権」といい、その考案を「被告考案」という。)を有しているので、A発明と被告考案とは実用新案法一七条の関係にあり、したがって、被告は、同法二二条に規定する「自己の登録実用新案の実施をするための通常実施権の設定の裁定」を請求できる地位にあるのであるから、被告製品を正当に製造販売することかできる。

考案の名称 海苔剥ぎ取り装置

出願日 昭和五二年八月二五日

出願公告日 昭和五五年一二月二三日

登録番号 第一四六四〇七五号

実用新案登録請求の範囲

「海苔剥ぎ機において、機枠に付着海苔簀の吸着移行装置を設け、同装置の中途に移行海苔簀の折返し部を設けると共に、同折返し部は、水平移行してきた海苔簀の両端部を、先端が屈曲した折返し案内杆の先端屈曲部で受止めながらガイドして反転せしめるべく構成し、同折返し部の下方に回動チェーンを設け、同チェーンに折返し部から鋭角に下向移行する剥ぎ取り移行部を設け、回動チェーンには係止爪を連設し、同係止爪が上記折返し部で海苔簀の先端部に係合すべく構成すると共に、上記剥ぎ取り移行部の終端迂回部において、上記係止爪が海苔簀との係合を解くべく構成したことを特徴とする海苔剥ぎ取り装置。」

2  被告機械はB特許を侵害するか(争点2)。

(一) 原告ら

(1)<1> B明細書の発明の詳細な説明に「この発明は上記のようにすの屈折部上方に真空吸引装置を設け、海苔送りローラ16で剥離後の海苔を送るようにしたので海苔に傷をつけないで送給が確実に行えることが可能となった。」(訂正公報二頁二五~二六行)と記載されていることからも明らかなように、海苔送りローラ16は、孔あきエンドレスベルトで吸着送給している間に海苔を挟持送給して、剥離後の海苔を搬送姿勢のまま真っすぐ前方へ送り出すことを要旨とするものである。

<2> なお、ここにいう「挟持」とは、通常の用法に従い「そばから力を添えて助けささえること」(広辞苑)、「わきにはさみもつ」(常用漢和辞典)ことを意味するものである。「挟む」とは「<1>物と物との間にさし入れて固定する。物と物との間に入れて落ちないようにする。<2>中間の位置におく。間に入れる。」(広辞苑)ことを意味するが、挟む力(ささえる力)の強弱は、挟持の目的、対象物の如何によって全く変わるものであることは、何人も承知しているところである。対象物が海苔の場合には、「海苔に傷をつけない程度に挟んでささえること」「剥がれた海苔を搬送姿勢のまま助けささえること」を意味するものである。

<3> 原告建部が特許異議答弁書に被告主張のような記載をしたことは事実であるが、右主張は誤りであり、かつ、これが異議決定の結論に影響を与えたことはないので、禁反言の原則ないし信義則に反するものではない。

(2) イ号機械

<1> イ号機械は、

a 簀送り用コンベヤ17上に載置されて送られてきた海苔が付着した簀を、簀は進行方向と反対の方向に転換させて移送し、海苔は進行方向へ送り出して、簀から海苔を分離する装置において、

b 簀送り用のコンベヤ17の一端側上部に孔あきエンドレスベルト6の一端側を重ねておき、

c 重ね部分側のコンベヤ17の端部ローラ20の上方の孔あきエンドレスベルト6の下部走行部上に真空吸引装置7を配設すると共に、

d 該真空吸引装置7の前方の下部走行部下に海苔送りローラ41を設けると共に同送りローラ41にVベルト44を懸架し、

e 真空吸引装置7の前方の下部走行部を短くして、その前方に海苔送り上ローラ42を設け、同上ローラ42下方に僅かな間隙を保持して海苔送りローラ43を設けて

f なる海苔・簀分離装置

であるところ、B発明の構成要件Aと右a、Bとb、Cとc及びEとfとは全く同一である。

<2> そして、イ号機械の海苔送りローラ41、Vベルト44及び海苔送りローラ43は、それぞれB発明の海苔送りローラ16と構成、作用効果が同じであって、単独でB発明の海苔送りローラ16に該当するということができるのであるから、イ号機械は、B発明の構成要件Dをも充足するものであり、その技術的範囲に属する。

すなわち、イ号機械は、真空吸引装置7の前方の下部走行部下に海苔送りローラ41を設けており、かつ、右海苔送りローラ41にはV字溝があり、Vベルト44は一ミリメートルも突出しておらず、約〇・八ミリメートル突出しているにすぎないので、剥離後の海苔は孔あきエンドレスベルト6と海苔送りローラ44との間で挟持送給される。仮にVベルト44が一ミリメートルの突出状態となっていたとしても、剥離後の海苔は大きく挟んで送られるのであるから、挟持送給に当たる。そもそも挟持送給するのでなければ、海苔送りローラ41を使用する理由がない。そして、一般にローラ搬送ベルト搬送も周知慣用の技術であり、送りローラをVベルトに設計変更することは容易である上、海苔を挟持送給する作用効果も同一であるから、真空吸引装置7の前方の下部走行部下に設けられたVベルト44もB発明の海苔送りローラ16に該当する。

また、イ号機械は、真空吸引装置7の前方の孔あきエンドレスベルト6を短くして、両吸引装置7の前端から一一五ミリメートルの位置に海苔送り上ローラ42、海苔送りローラ43を設けているところ、海苔の大きさは二一二ミリメートル×一九一ミリメートルであるから、孔あきエンドレスベルト6で吸着着送給している間に海苔送りローラ43と海苔送り上ローラ42で挟持送給される。したがって、海苔送りローラ43もB発明の海苔送りローラ16と作用効果は同一であり、海苔送りローラ16に相当するものである

<3> 仮にそうでないとしても、イ号機械は、吸引口から外れた海苔を搬送姿勢のまま遠くまで送るために、海苔送りローラ41、Vベルト44及び海苔送りローラ43を設けたのであり、これらが孔あきエンドレスベルト6や海苔送り上ローラ42と同じ速度で一体的に回動し、剥離後の海苔を孔あきエンドレスベルト6や海苔送り上ローラ42との間で挟持して前方の所定位置へ真っすぐ送給するようにしており、これらを総合したものは、B発明の海苔送りローラ16と全く同じ機能を有するものである。そして、B特許の出願時において、ローラ搬送やベルト搬送は周知慣用の技術であって、B発明の海苔送りローラ16をイ号機械の海苔送りローラ41、Ⅴベルト44及び海苔送りローラ43に変えることは、当業者が極めて容易に行うことができ、また、そのように変えても作用効果は全く同一であるから、右海苔送りローラ41、Ⅴベルト44及び海苔送りローラ43を総合したものは、B発明の海苔送りローラ16の単なる設計変更にすぎない。

なお、イ号機械の孔あきエンドレスベルト6、海苔送りローラ41、Ⅴベルレ44、海苔送りローラ43、海苔送り上ローラ42の速度をタコメータで実測すると、全部が毎分四〇メートルの等速度であり(ロ号機械も同じ。)、挟持送給には最適の設計になっている。

(3) ロ号機械

<1> ロ号機械は、

a 簀送り用コンベヤ17上に載置されて送られてきた海苔が付着した簀を、は進行方向と反対の方同に転換させて移送し、海苔は進行方向へ送り出して簀から海苔を分離する装置において、

b 簀送り用のコンベヤ17の一端側上部に孔あきエンドレスベルト6の一端側を重ねておき、

c 重ね部分側のコンベヤ17の端部ローラ20の上方の孔あきエンドレスベルト6の下部走行部上に真空改引装置7を配設すると共に、

d 該真空吸引装置7の前方の下部走行部下に海苔受け杆48を設け、

e 頁空吸引装置7の前方の下部走行部を短くして、その前方に海苔送り上ローラ42を設け、同上ローラ42下に海苔送りローラ43を設けて

f なる海苔・簀分離装置

であるところ、B発明の構成要件Aと右a、Bとb、Cとc及びEとfとは全く同一である。

<2>そして、ロ号機械においては、B発明の構成要件Dの真空吸引装置12の前方の下部走行部下に海苔送りローラ16を設ける代わりに、dの海苔受け杆48を設け、eの真空吸引装置7の前方の下部走行部を短くして、その前方に海苔送り上ローラ42を設け、同上ローラ42下に海苔送りローラ43を設けているところ、B発明の構成要件Dは、孔あきエンドレスベルト15に吸着されて送られてきた海苔の前端を挟持して前方へ送り出すためのものであり、ロ号機械の海苔受け杆48は、孔あきエンドレスベルト6との間で挟持して海苔送りローラ43まで確実に海苔を送給するために設けたものであって、海苔受け杆48と海苔送りローラ43を総合したものがB発明の海苔送りローラ16に相当し、また、孔あきエンドレスベルト6と海苔送り上ローラ42を総合したものかB発明の孔あきエンドレスベルト15に相当する。

<3> なお、孔あきエンドレスベルト6か海苔に吸着する作用をするのは、真空吸引着装置12の置下を走行する部分だけで、真空吸引装置の前方の下部走行部は単に搬送の作用をするたけであるから、ベルトローラに換えてB発明の構成要件Dをd及ひeの構成にすることは、当業者が極めて容易に行うことかでき、B発明の技術思想内における単なる設計変更にすきない。したがって、右構成要件Dとロ号機械のd及びeの構成は、実質的に向一であり、ロ号機械はB発明の技術的範囲に属する。

(二) 被告

被告機械はB発明の技術的範囲に属しない。

(1)<1> B発明の構成要件Dは、海苔送りローラ16か真空吸引装置12の前方の下部走行部下に配設されていることを必須不可欠としている。このことは、B明細書の発明の詳細な説明に、「この発明の構成要旨は、・・海苔運搬ベルト(孔あきエンドレスベルト)に吸着させて海苔送りローラで挟持して送給するものである。」(訂正公報一頁一七行~二頁二行)、「真空吸引装置12の近傍の孔あきエンドレスベルト15の下部ベルト下部に海苔送りローラ16を設けている。」(同二頁一一~一二行)と記載され、その作用として「海苔は真空吸引装置12で孔あきエンドレスベルト15に吸い寄せられ、さらに海苔送りローラ16に挟持されて前へ送られ、海苔後端が海苔送りローラ16を通過して落下し、海苔ガイド板10で所定の場所に集積される。」 (同二頁二三~二四行)と記載され、海苔送りローラ16が孔あきエンドレスベルト15との間で海苔を挟持して送給することが強調されていること、及び原告建部が特許異議答弁書(甲六)に「この海苔送りローラ16が真空吸引装置12の前方の下部走行部下に設けてあるので、送られてきた海苔の後端が真空吸引装置12から次第に外れて吸着作用が弱くなったときには、孔あきエンドレスベルト15と送りローラ16との間で海苔を挟持しているために海苔後端部の剥離が確実に行なわれる。」と記載し、審査官が「本願発明は孔あきエンドレスベルトと真空吸引装置および海苔送りローラを組み合わせて使用することにより、明細書記載の効果を奏するものと認められる」との理由で異議申立は理由がないとの決定(甲九)をしたことに照らしても明らかである。

そうすると、B発明における「海苔送りローラ16」は、孔あきエンドレスベルト15の下部ベルト下に位置していること、及び孔あきエンドレスベルト15との間に海苔を挟持して搬送するものであることか、B明細書の記載から明らかである。

<2> なお、「挟持」とは、引き抜いても抜け切らない程度の圧迫された「挟み」状態、あるいは「しっかり挟み持つ」ことをいうのである。

<3> 原告建部は、右「挟持」の意味について、特許異議答弁書においては、真空吸引装置から海苔が次第に外れて吸着作用が弱くなったときの海苔後端部の剥離を助ける程度の「挟み込み」が海苔送りローラ16に必要なことを主張しておきながら、本訴において「海苔が滑り落ちない程度の挟み込みでよい。」と主張するに至っているのであって、禁反言の原則に反する。

(2) イ号機械は、B発明の「海苔送りローラ16」の構成、作用、効果を具備していない。

イ号機械には、真空吸引装置7の前方に海苔送りローラ41と海苔送りローラ43との間に懸架したⅤベルト44が配設されているが、この海苔送りローラ41は単にVベルト44を支持するためのものにすぎないし、Vベルト44は、海苔送りローラ41よりは約一ミリメートル突出する状態となっており、剥離された海苔は、海苔送りローラ41とは何ら接触することなくVベルト44上に直接載置されて搬送されるのである。しかも、Vベルト44と孔あきエンドレスベルト6との間隙は実寸で約八ミリメートルであるのに、海苔の厚みは稍々〇・五ないし一・〇ミリメートルであるから、孔あきエンドレスベルト6とVベルト44との間隙で海苔を「挟持して送給する」機能は全くない。しかも、孔あきエンドレスベルト6の速度か毎分三七メートルであるのに対し、Vベルト44のそれは毎分四〇メートルであって、速度に差があるのであるから、「挟持、送給」の機能を有しているのであれば、海苔の表面をつけることになってしまう。

なお、B発明の海苔送りローラ16は、海苔を直角(垂直)方向へ引っ張って剥離する技術の補完技術として機能するものであるのに対し、イ号機械はかかる技術的思想を全く有していないのであるから、イ号機械がB発明の技術的範囲にしないことは明らかである。

(3) ロ号機械は、イ号機械のVベルト44の代わりに「海苔受け杆48」を有しているが、これは、孔あきエンドレスベルト6の約一二ミリメートル下方に設けられており、しかも固定して不動のものであるから、全く挟持送給の機能を有しておらず、B発明の海苔送りローラ16の構成、作用、効果を具備していない。また、海苔受け杆48の前方には、剥離した海苔を搬送するための丸ベルト47があり、同丸ベルト47の前端には、下方の海苔送りローラ43と上方の海苔送り上ローラ42とが位置し、両ローラ43、42の間は一定の間隙を有しており、海苔は、この両ローラ43、42間を通過して丸ベルト47上に載って搬送されるものであって、両ローラ43、42は、海苔の膨らみや反り返りを修正する程度のものであり、この間で海苔を挟持して搬送するものではない。更に、両ローラ43、42は、多孔移動ベルト6とは一切接触することなく、同ベルト6の前方に配設されており、同ベルト6との間に海苔を挟持する機能は一切ない。したかってロ号機械は、海苔を孔あきエンドレスベルト6と海苔送りローラ43との間で挟持して搬送する構成を有しておらず、B発明の技術的範囲には属しない。

3  原告らの損害はいくらか(争点3)。

(一) 原告ら

(1) 被告機械の販売台数

<1> A特許侵害に関する分

被告は、被告機械を、原告川島が単独の権利者であった昭和五六年四月二〇日から昭和五七年二月一四日までの間に一八三台(少なくとも一三六台)、原告ら三名が権利者となった同月一五日以降に九六台(少なくとも九二台)製造販売した。

<2> B特許侵害に関する分

被告は、被告機械を、原告建部が単独の権利者であった昭和五四年八月七日から昭和五五年八月六日までの間に一三一五台(少なくとも一二五六台)、原告建部及び原告会社が権利者となった同月七日から昭和五六年四月一九日までの間に七三一台(少なくとも六七二台)製造販売した。

(2) 損害額の算定

本件各特許権の実施料は一台当たり五万円が相当であるから、原告らの損害額は次のとおりとなる。なお、被告の販売した機械の中には中古品として再度販売されたものもあるが、中古品の販売に際しても再度同じ利益を得ているのであるから、その都度実施料を支払うべきであるし、また、本件の中古品について過去に実施料が支払われた事実はないので、いずれにせよ中古品として販売されたものを他と区別すべき理由はない。

<1> A特許侵害に関する損害額

原告川島の単独権利期間

九一五万円(少なくとも六八〇万円)

原告ら三名共有期間

四八〇万円(少なくとも四六〇万円)

<2> B特許侵害に関する損害額

原告建部の単独権利期間

六五七五万円(少なくとも六二八〇万円)

原告二名共有期間

三六五五万円(少なくとも三三六〇万円)

(3) 原告毎の集計

<1> 原告建部分八五六二万五〇〇〇円(少なくとも八一一三万円)

<2> 原告会社分一九八七万五〇〇〇円(少なくとも一八三三万円)

<3> 原告川島分一〇七五万円(少なくとも八三三万円)

(二) 被告

(1) 原告ら主張の販売台数を争う。

(2) 実施料を一台当たり五万円とするのは不当であり、平均販売価格七〇万円の二パーセントとすべきである原告ら提出の特許実施契約でも特許権一〇件をまとめて一台当たりの実施料を五万円としているのであるから、原告らの主張を裏付けるには足りない。

(3) 中古品は新製品の段階で実施料の支払対象とされているので、中古販売の段階で更に実施料を取るとすれば二重払となり不当である。

第三  争点に関する判断

一  争点1(被告機械はA特許を侵害するか。)について

1  A発明と被告機械との対比

(一) 被告機械がA発明の構成要件<1>のAないしDの要件を充足していることは、前記第二の一2の事実から明らかである。

被告は、A発明の「空気吸引口7の直下に海苔引爪15を設け」との要件を云々しているか、被告機械において、海苔引爪15か空気吸引口7の直下にないとはいえないし、また、被告の右主張は、A発明の実施例に基づくものにすぎないから、到底採用することはできない。

(二) 被告機械がA発明の構成要件<2>及び<3>の要件を充足していることは、前記第二の一2の事実から明らかである

(三) 以上のとおりであるから、被告機械はA特許請求の範囲第1項ないし第3項をそれぞれ侵害するものである。

2  なお、被告が被告実用新案権を有しており、被告考案がA発明を利用する関係にあることは当事者間に争いがないが、仮に、被告機械が被告考案の実施品であったとしても、A特許について実用新案法二二条に規定する裁定がされたことの主張立証のない本件では、被告は、被告考案が存在することを理由にA特許侵害の質めを免れることはできない。したがって、右の点に関する被告の主張は、採用することができない。

二  争点2(被告機械はB特許を侵害するか。)について

被告機械がB発明の構成要件AないしC及びEの各要件を充足していることは、前記第二の一2の事実から明らかである。そこで、被告機械がB発明の構成要件D「該真空吸引装置12の前方下部走行部下に海苔送りローラ16を設けたこと」を充足するか否かについて検討する。

1  B発明の構成要件の解釈について

(一) 「海苔送りローラ16」について

B明細書の発明の詳細な説明には、「海苔送りローラ16」の構成及び機能について次のように記載されていることが認められる(甲三、一三)。

(1) 「該真空吸引装置の前方の下部走行部下に海苔送りローラを設け、海苔だけを真空吸引装置によって海苔運般ベルト(孔あきエンドレスベルト)に吸着させて海苔送りローラで挟持して送給するものである。」(訂正公報一頁二一~二頁二行)

(2) 「真空吸引装置12の近傍の孔あきエンドレスベルト15の下部ベルト下部に海苔送りローラ16を設けている。」(同二頁一一~一二行)

(3) 「海苔送りローラ16及び、孔あきエンドレスベルト15は一つのモータまたはそれ以上のモータと減速装置を使用して駆動されるものであるがその伝導詳細部は図示されていない。」(同二頁一三~一四行)

(4) 「さらに海苔送りローラ16に挟持されて前へ送られ、海苔後端が海苔送りローラ16を通過して落下し、海苔ガイド板10で所定の場所に集積される。」(同二頁二二~二四行)

(5) 「この発明は上記のようにすの屈折部上方に真空吸引装置を設け、海苔送りローラ18で剥離後の海苔を送るようにしたので海苔に傷をつけないで送給が確実に行なえることが可能となった。」(同二頁二五~二六行)

以上の明細書の記載及び第二の一1(二)(4)に記載したB発明の目的、作用効果に照らせば、B発明の海苔送りローラ16の機能は、真空吸引装置により孔あきエンドレスベルト15に吸い寄せられた海苔を挟持して前に送るものであることが明らかである。

(二) 「挟持」の意味について

(1) 「挟持」とは、一般に「挟んで持つ」あるいは「挟んで支持する」ことを意味するが、「挟む」とは「物と物との間にさし入れて両側から固定する」「物と物との間に入れて落ちないようにする」「中間の位置に値く」「間に入れる」(広辞苑)こと等を意味するのであって、「挟持」との文言から、直ちに挟む強さの度合いあるいは挟む状態が一義的に定まるものではない。

B明細書における海苔送りローラ16に関する前記の記載に照らすと、B発明においては、剥離された海苔が孔あきエンドレスベルト16に吸着されて海苔送りローラ16によって前方に送られるが、その際、海苔送りローラ16の送り機能が意味を有し、孔あきエンドレスベルト15及び真空吸引装置との組合せによって、B明細書記載の作用效果が得られるものと理解することができる。この場合、「挟持」の意味は、海苔が孔あきエンドレスベルト15と海苔送りローラ16との間に挟まれた状態で、あるいは、双方に接触する状態で送られることになるので、B明細書に「挟持されて前へ送られる」と表現されたものと考えるのが自然である。「挟持」にそれ以上の意味があるものと認めるべき根拠はない。

(2) 原告建部が特許異識答弁書に「この海苔送りローラ16が真空吸引装置12の前方の下部走行部下に設けてあるので、送られてきた海苔の後端が真空吸引装置12から次第に外れて吸着作用が弱くなったときには、孔あきエンドレスベルト15と送りローラ16との間で海苔を挟持しているために海苔後端部の剥離が確実に行なわれる。」と記載したことは、当業者間に争いかない。

しかしながら、海苔送りローラに海苔を送る機能があれば、それによって多少なりとも剥離を助ける効果は生じるのであって、挟み込みの強さについては、程度の問題にすぎず、前記の特許異議答弁書に記載した主張から、直ちに「強い挟み込み」が必要であるということにはならないし、また、特許異議の決定(甲九)を見ても、海苔送りローラの強い挟み込みが要件であるとして判断されたものとは認められない。

そうすると、特許異議答弁書の右の記載を参酌したとしても、「挟持」の意味を被告主張のように解すべきものとすることはできないし、また、「挟持」の意味についての原告らの主張が、禁反言の原則に反するということもできない。

2  イ号機械の構成について

イ号機械の構成のうち、「d該真空吸引装置7の前方の下部走行部下に海苔送りローラ41を設けると共に同送りローラ41にVベルト44を架し」及び「e真空吸引装置7の前方の下部走行部を短くして、その前方に海苔送り上ローラ42を設け、同上ローラ42下方に箇かな間隙を保持して海苔送りローラ43を設けて」との構成とB発明の構成要件Dとの関係が問題になるところ、右のうちeの構成は、単なる付加的な構成にすぎないものと認められるので、結局、dの構成と構成要件Dとの異同が問題になる。

(一) 「海苔送りローラ41」について

(1) 海苔送りローラ41は、真空吸引装置の前方の孔あきエンドレスベルト6の下部走行部下に設けられていることは、前記第二の一2の事実から明らかであるとこる、証拠(甲三〇、乙四二、証人山光雄、第一、二回検証)によれば、<1>運転中のVベルト44と孔あきエンドレスベルト6との間隙は、Vベルトが大きく上下に脈動するため正確に計測することはできないが、最大時で一〇ないし一一ミリメートル程度、最小時で二ないし三ミリメートル程度であることが目視されたこと、<2>運転停止の状態では、孔あきエンドレスベルト6とVベルト44との間隙及び孔あきエンドレスベルト6と海苔送り上ローラ42との間隙はいずれも約六ミリメートルであること、<3>海苔送りローラ41の幅は二五ミリメートル、Vベルト44の輻は一〇ミリメートルであり、海苔送りローラ41の方が一五ミリメートル広いこと、<4>Vベルト44は海苔送りローラ41の周面から〇・四ないし一・五ミリメートル突出していること、<5>海苔から剥がされた海苔は、五ないし一五ミリメートル程度の湾曲(見掛けの厚さ)がある状態になること、<6>Vベルト44と手送り搬送中(作動中のイ号機械を停止させた後、吸引状態のまま手動で海苔を送り出して停止させた状態)の海苔との間隙は五ないし五・五ミリメートルであり、同ベルト44と搬送中の海苔との間隙は三ないし四ミリメートルであること、<7>真空吸引装置7の吸引口の前端から海苔送りローラ43までの距離は一四センチメートルであること、<8>海苔は通常一九センチメートル×二一センチメートルの規格になっていること、<9>剥がれた海苔が前方へ送り出され、海苔の後端が孔あきエンドレスベルト6から外れる直前には、海苔の後端が海苔送りローラ41の上にあり、海苔の後端が空気吸引口7から外れると海苔送りローラ41の上に載るが、その際には、既に海苔の先端は海苔送りローラ43と海苔送り上ローラ42との間にあること、<10>剥がされた海苔には湾曲があるし、また、海苔の一方の端だけが支えられると他の一方の端は垂れ下がるので、孔あきエンドレスベルト6とVベルト44の両方に接触する状態になることがあること、以上の事実が認められる。

右の事実によれば、海苔から剥がれた海苔は、海苔送りローラ41と孔あきエンドレスベルト6の双方あるいはそのいずれか一方に接触しつつ、すなわち、挟まれる状態で支持されつつ送給されると見ることができ、この状態を「挟持して送給される」と見ることは何ら不自然、不合理ではない。

(2) 被告は、海苔送りローラ41は、Vベルトを支持するためのものであって、孔あきエンドレスベルトとの間で海苔を挟持する機能はないと主張するが、海苔送りローラはVベルトよりは輻が広く、海苔を支持する機能も当然に備えているのであるから、右の主張は採用することができない。

(3) また、被告は、孔あきエンドレスベルト6の速度か毎分三七メートルであるのに対し、Vベルトのそれは毎分四〇メートルであるから、「挟持送給」の機能を有しているのであれば、海苔の表面を傷つけてしまう旨主張するところ、第一回検証の結果によれは、原告ら掲示のイ号機械では、孔あきエンドレスベルト6の分速が四〇メートル、Vベルト44のそれが四一メートル、被告提示のイ号機械では、孔あきエンドレスベルト6の分速が四〇メートル、Vベルト44のそれが四三メートルであったことが認められるか、前認定のとおり、孔あきエンドレスベルト6とVベルト44の間に、海苔を挟んでも余裕のある間隙があることにみると、孔あきエンドレスベルト6の速度とVベルト44のそれとの間に前記の程度の差があるのに海苔に傷をつけないからといって、前記の判断を左右するには足りないというべきである。

(4) なお、特許庁の判定(乙二九)は、海苔送りローラと孔あきエンドレスベルトとの間隙は、Vベルト44のローラ周面からの突出分約一ミリメートルを差し引いても約七ミリメートルもあり、この間隙からみて、海苔送りローラ41は、海苔をその上にせて前に送る機能はあっても、孔あきエンドレスベルトとの間で海苔を挟持し前に送るというものではないと認められる、としている。しかし、右の判定は、その判断の前提となるべき「挟持」の意味についての検討が十分でないものと認められるので、前記の判断を左右するには足りないというべきである。

(二) 「Vベルト44」について

ベルトとローラとは、一般にの搬送手段として同様の機能を有するものであるが、構造上異なることが明らかであるから、B発明の海苔送りローラ16と比較した場合に、Vベルト44が直ちに均等手段に当たるということはできない。

しかし、イ号機械のVベルト44は、海苔送りローラ41に支持されつつ、海苔を移送する機能を海苔送りローラ41と共に果たしているのであり、換言すれば、海苔送りローラ41は、Vベルト44を利用して挟持搬送機能を果たしているのであるから、B発明の「下部走行部下に設けた海苔送りローラ16」の使用の一態様とみることができる。したがって、Vベルト44が懸架されていることをもって、イ号機械の構成dがB発明の構成要件Dとは異なるものと解することはできない。

(三) 以上に述べたところによれば、イ号機械は、B発明の構成要件Dを充足し、したがって、その技術的範囲に属するものというべきである。

被告は、B発明の海苔送りローラ16は海苔を直角(垂直)方向へ引っ張って剥離する技術の完技術として機能するものであるのに対し、イ号機械はかかる技術的思想を全く有していないのであるから、イ号機械はB発明の技術的範囲に属しない旨主張している。そして、弁士・弁理士三宅正雄外の意見書(乙五六の一ないし三)には、B発明の構成要件Dは、「この構成によって、から剥離(分離)されたのちの海苔は、真空吸引装置12の作用により孔あきエンドレスベルト15側に吸い寄せられたうえ、きらに前記ベルト15の下部に設けた海苔広りローラ16に挟持(挟み保持すること)されて前方に送られるよう機能し、そうすることによって、海苔をいためないという効果を期待して設計されたものである、と認めることができる。・・これに対し、イ号装置においては、剥離後の海苔を海苔送りローラによって挟持して前方に送給することによって、海苔に傷をつけないで確実に送給するという技術思想はない。・・したがって、イ号装置は、この点において、本件特許発明の技術的範囲に属する、とはいえない、と結論される。」と記載されている。しかし、前認定の事実に照らせば、「イ号装置においては、剥離後の海苔を海苔送りローラによって挟持して前方に送給することによって、海苔に傷をつけないで確実に送給するという技術思想はない。」とする点は、事実に反するものというべきであるから、右の意見書の見解をもってしても、前記の判断を左右することはできない

3  ロ号機械の構成について

ロ号機械の海苔受け杆48は、その構造からしてローラとは全く異なる。その機能面から見ても、B発明の海苔送りローラ16は海苔を積極的に送る機能を備えることか当然の前提とされているのに対し、海苔受け杆48は海苔を送る機能を全く有さす、単に海苔を案内するものにすきない。

したがって、両者を同等のものとすることはできず、ロ号機械において、海苔から剥がされた海苔が海苔受け杆48と孔あきエンドレスベルト6によって挟持される状態にあるということはできても、海苔受け杆48は、B発明の海苔送りローラ16のように「狭持して送紿する」機能をえていないので、ロ号機械は、B発明の構成要件Dを充足せす、その技術的範囲に属しないものというべきである。

三  争点3(原告らの損害はいくらか。)について

1  被告機械の取売台数について

(一) 先す、被告機械の機種別生産台数について見るに、証拠(甲二二、二三、乙二二の一ないし五、乙二三、三九証人塚崎英機、原告建部洋、被告代表者、第一、二回検証)及び弁論の全趣旨によれば、<1>被告においては、海苔剥ぎ機の構造の一部を変えた場合に型式番号を改めていたこと、<2>被告は、海苔剥ぎ機につき、昭和五二年にTH-1型二〇〇台を、昭和五三年七月一九日から昭和五四年一月二三日までの間にTH-2型の製造番号一一一一号から二一一一号まで(ただし二一一〇号は欠番)一〇〇〇台を、昭和五四年三月五日から昭和五五年一月一八日までの間にTH-3型の製造番号三〇〇一号から四四五〇号まで一四五〇台を、同月三〇日から同年四月二五日までの間にTH-4型の製造番号四五〇一号から五二五〇号まで七五〇台を、その後同年中に同型の機械二〇〇台(製造番号は五二五一号から五四五〇号まで)を、昭和五六年にTH-5型の製造番号六〇〇一号から六一五〇号まで一五〇台を、昭和五七年にTH-6型の製造番号七〇〇一号から七〇五〇号まで五〇台をそれぞれ製造したこと、<3>ロ号機械はイ号機械の後に製造されたものであり、TH-1型及びTH-2型はイ号機械に当たり、TH-4型、TH-5型及ひTH-6型はロ号機械に当たること、<4>TH-3型のうち、四四〇三号、四四〇七号、四四一〇号、四四一二号、四四一四号、四四一七号及び四四二三号はいずれもイ号機械に当たること、<5>TH-4型の取売台数は少なくとも九五七台であること、以上の事実が認められる。

右の事実によれは、TH-3型はイ号機械であり、また、TH-4型の製造台数は九五七台を下らないものというべきである。

(1) 被告代表者は、昭和五四年後半にロ号機械を作り始め、昭和五五年には全部ロ号機械になった旨、証人山光雄は、昭和五四年TH-3型に変えた時にロ号機械に変えた旨それぞれ供述しているが、前記<4>の事実及ひTH-3型のうちにロ号機械に相当するものかあったことを認めるべき客観的証拠がないことに照らして、右各供述は信用することかできず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(2) また、原告建部本人は、TH-4型には五四七五号があった旨供述し、甲第二二号証(写真)のほか甲第二一号証の七、第二五号証の二を提出しているか、右写真の該当機械の製造番号は、その他の機械の製造番号の数字と対比すると、五四七五号ではなく五四一五号であると認められるので、右の供述及ひ甲第二一号証の七、第二五号証の二の各記載内容を直ちに措信することはできない。

(3) 更に、証拠(乙三五、証人元村明子)によれは、乙第二二号証の三は、元村明子が被告の製造部商品係から送られてくる検収書(製造番号、品名、型式、数量等を記入するようになっている。)に基づいて記載したものであると認められるところ、これには昭和五六年八月一〇日に株式会社サワコーに対し、TH-4型の製造番号五四九三号及び五四九五号を韓国に輸出するために販売した旨の記載がある。しかし、証人塚崎英機の証言によれば、被告において、輪出品については前記の製造番号の記入方法の枠外の番号を付していたことがえないではないので、未だ右の記載から直ちに五四五一号から五四九五号までの機械が製造されたものと認めることはできないというべきである。

(4) なお、証人塚崎英機は、TH-5型のうち、売れ残った五〇台をTH-6型に改造した旨供述するが、これを裏付ける客観的資料に欠け、直ちに措信することはできない。

(二) 次に、被告機械の磯種別取売台数について検討する。

(1) 乙第二二号証の一ないし五(以下「総合資料」という。)には、甲第二五号証の四が指摘しているとおり(ただし、「販売年月日」欄記載の「54・10・21」は「54・12・21」の(四一二一号)、「58・12・11」は「57・12・11」の(七〇〇六号)、「58・11・3」は「57・11・3」の(七〇一六号)各誤記であると認められる。)の重複記載があることが認められる。その理由は明らかでないので、最初の販売分のみを残し、他は販売数に加えないのが相当である。

(2) 総合資料には、甲第二五号証の三に指摘しているとおり、販売したものとして一旦記載したが、返品、交換、理由不明で抹消し、販売台数に含めていないものかあることが認められる。しかし、これらが再び販売されたことを認めるに足りる証拠はないので(ただし、TH-4型の製造番号四九一九号については、後記(4)に述べるとおりである。)、これらが販売されたものと認めることはできない。

(3) 証拠(乙二三)及び弁論の全趣旨によれば、総合資料に記載されていないもののうち製造番号五二五一号から五四五〇号までは、昭和五六年四月一九日までの間に販売されたものと認められる。

(4) 証拠(甲二一の八、甲二二、二四、甲二五の二、証人野村直、原告建部本人)によれば、右(3)に記載したものを除くほか、総合資料に記載されていない機械で販売されたものは、TE-3型が九台(製造番号三一四五号、三一七七号、三五七一号、三五八四号、三六一四号、三六六三号、四〇二七号、四〇四二号、四三六九号)、TH-4型が一三台(製造番号四五八六号、四五九四号、四六三〇号、四六六一号、四六七五号、四六九四号、四六九五号、四六九七号、四七〇〇号、四七〇六号、四九一九号、五二〇〇号、五二二七号。製造番号五四七五号は前記(一)(2)記載のとおり五四一五号の誤りであり、総合資料に記載されているのでこれを除く。)、TH-5型が六台(製造番号六〇〇二号、六〇〇四号、六〇二〇号、六〇七三号、六一一四号、六一三九号)、TH-6型が二台(製造番号七〇二五号、七〇三二号)である。

ところで、前認定の事実によれば、TH-3型はイ号機械であり、TH-4ないし6型はロ号機械であるというべきところ、証拠(乙二二の二、乙二三)によれば、<1>右記載漏れ分の機械のうち、TH-3型の前記機械九台は、昭和五四年三月一九日から同年一二月二〇日までの間に、TH-4型の前記機械一三台は、昭和五五年二月四日から同年四月二四日までの間に、それぞれ製造されたこと、<2>製造番号四九一九号は昭和五五年六月三日に販売されたことが認められるが、その余の機械の販売時期を異体的に特定するに足りる証拠はない。しかし、TH-3型については、前認定の事実及び前記証拠並びに原告らの公平を考慮し、B特許が原告建部及び原告会社の共有になった昭和五五年八月七日から昭和五六年四月一九日の間に販売されたものと認めるのが相当である。また、前記証拠によれば、TH-4型が主として昭和五六年四月一九日以前に販売されているものと認められることに鑑みると、製造番号四九一九号を除く一二台の機械及びその他総合資料に記載されていない同型の機械が右期間内に販売されたものであることを否定することができないので、これらがA特許権を侵害するものということはできない。更に、前記証拠によれば、TH-5型の殆どすべてが昭和五六年四月二〇日から昭和五七年二月一四日までの間に、TH-6型の殆ど全でが同月一五日以降にそれぞれ販売されているものと認められるので、前記TH-5型の六台は前者の期間内に、TH-6型の二台は後者の期間内にそれぞれ販売されたものと推認するのが相当である。

(5) 前記(1)ないし(4)の認定判断及び総合資料を総合すると、被告が販売した被告機械のうちA特許権及びB特許権を侵害するものの台数は、別紙「期間別販売台数表」記載のとおりであると認められる。

以上の認定に反する乙第四一号証の記載及び元村明子の供述は、その体裁、記載内容及びこれを裏付ける客観的資料に欠けることに照らして措信することができない。

2  実施料相当額について

証拠(甲一九の一ないし七、乙八、証人野村直、原告建部本人)によれば、原告建部及び原告会社は、海苔剥ぎ機に関する数個の特許権等を有しており、昭和五三年及び昭和五五年に、B特許(B特許を分離する前のものを含む。)を含むこれらの権利につき、海苔剥ぎ機を製造販売する断外株式会社長瀬鉄工所外に対して通常実施権を与える契約を締結したが、右契約において、実施料として海苔剥ぎ機一台当たり五万円を徴する旨合意したこと、右特許権等は、一台の機械を作成するために全てを必要とするものではなく、一緒には用いられないものもあること、A特許又はB特許は海苔剥ぎ機の基本的な構成に関するものであること、以上の事実が認められる。

右の事実によれば、右原告らは、海苔剥ぎ機を製造するために必要な特許等を使用した場合には、使用特許数の多寡を問わず、機械一台当たり五万円の実施料を徴していたということができる。また、A特許が同じ海苔剥ぎ機に関してB特許の後に出願された特許であることからすると、A特許が経済的に見てB特許に劣るものであるとは考えられない。そして、A特許又はB特許が海苔剥ぎ機の基本的な構成に関するものであることをも併せ考えると、A特許又はB特許の海苔剥ぎ機に占める割合は、八〇パーセントと認めるのが相当である。そうすると、本件においては、他に実施料相当額を算定するに当たり考慮すべき特段の事情が存することの主張立証がないので、被告機械一台当たりの実施料相当額は四万円であると認めるのが相当である。

なお、被告の販売品の中には中古品があるところ、証拠(総合資料、乙二三)によれば、当該中古品の中には、一且侵害品として計上した新品と同一の機械であるものも含まれていることが認められるが、被告は中古品の販売によって利益を挙げているのであり、実施料の定め方が前記のとおりである以上、中古品についても新品と同様に扱うのが相当である。

3  原告らの損害額について

前記1及び2に述べたところにより、原告らの請求期間内における原告らの損害額を算定すると次のとおりとなる。

(一) 原告建部 三〇一四万円

(七〇五+三七÷二+九〇÷三)×四=三〇一四

(二) 原告会社 一九四万円

(三七÷二+九〇÷三)×四=一九四

(三) 原告川島 六八八万円

(一四二+九〇÷三)×四=六八八

四  結論

以上のとおりであるから、原告らの本訴請求は、A特許及びB特許に基づき侵害行為の差止等及び前記損害の賠償を求める限度で理由があるが、その余は失当である。

(裁判長裁判官 瀬戸正義 裁判官 杉原則彦 裁判官 後藤博)

物件目録

(一) イ号機械

イ号機械は、別紙第1図(側面図)及び第2図(平面図)記載のとおり、無端多孔移動ベルト(孔あきエンドレスベルト)6を機枠1に支持し、同ベルト6の上面(孔あきエンドレスベルト6の下部走行部上)に空気吸引口(真空吸引装置)7を接し、同ベルト6及び空気吸引口7の直下に同ベルト6の移動方向と逆方向に向かって移動する海苔簧牽引爪15を機枠1に設け、その海苔簧牽引爪16は無端回動チエン10の二箇所にそれぞれ一個宛突設されていて、前記多孔移動ベルト6の移動速度よりも無端回動チエン10の移動速度を約一・二倍に増加し、海苔簧牽引爪15の移動速度を大となしている。

簧送り用コンベヤ17の一端側上部に前記多孔移動ベルト6の一端側を重ねておき、重ね部分側のコンベヤ17の端部ローラ20の上方の多孔移動ベルト6の下部走行部上に真空吸引装置7を配設すると共に、該真空吸引装置7の前方の下部走行部下方に僅かな間隙を保持して海苔送りローラ41を設け、真空吸引装置7の前方の下部走行部を短くして、その前方に海苔送り上ローラ42を設け、同上ローラ42の下方に僅かな間隙を保持して海苔送りローラ43を設けてなる海苔剥ぎ機である。海苔送りローラ41、43は両側に懸け渡したVベルト44によって回動し、海苔送りローラ43に相対し僅かな間隙を保持して設けたスポンジ製の海苔送り上ローラ42は、海苔送りローラ43、プーリ45、46、海苔送り上ローラ42に懸回した丸ベルト47によって回され、海苔を挟持して前へ送り出す。

9は多孔移動ベルト6の両側に設けた海苔簧下降誘導装置、26は無端回動チエン10の駆動鎖車11の両側に軸支した海苔簧分離取卸用高速大径歯車、40は簧受け板、23、24は海苔簧挟持ローラ、24、25は簧の先端を編み糸の方向に伸張させて海苔を簧から予備剥ぎする端剥ぎローラである。

(二) ロ号機械

ロ号機械は、別紙第3図(側面図)及び第4図(平面図)記載のとおり、イ号機械における海苔送りローラ41とVベルト44の代わりに剥離した海苔を案内する海苔受け杆48を設け、孔あきエンドレスベルト6との間には、僅かな間隙を保持しており、その他はイ号機械と全く同一である。

図面の符号の説明

符号 名称 符号 名称

1 機枠 10 無端回動ベルト(無端回動チエン)

2 ローラ 11 駆動鎖車

3 ローラ 12 案内鎖車

4 ローラ 13 案内鎖車

5 駆動ローラ 14 案内鎖車

6 多孔移動ベルト(孔あきエンドレスベルト) 15 海苔簧牽引爪

7 空気吸引口(真空吸引装置) 16 簧送り用の上ベルト

8 吸引ダクト 17 簧送り用のコンベヤ

9 海苔簧下降誘導装置 18 調車

19 調車 40 簧受け板

20 調車(端部ローラ) 41 海苔送りローラ

21 調車 42 海苔送り上ローラ

22 海苔簧挟持ローラ 43 海苔送りローラ

23 海苔簧挟持ローラ(スポンジローラ) 44 Vベルト

24 端剥ぎローラ 45 プーリ

25 端剥ぎ上ローラ 46 プーリ

26 海苔簧分離取卸用高速大径歯車 47 海苔送り用丸ベルト

27 海苔簧受け板 48 海苔受け杆

28 取卸海苔簧集積台

30 減速原動機

イ号機械

<省略>

イ号機械

<省略>

ロ号機械

<省略>

ロ号機械

<省略>

(別紙一)

<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告

<12>特許公報(B2) 昭56-17067

<51>Int.Cl.3A 23 L 1/337 識別記号 103 庁内整理番号  6714-4B <24><44>公告 昭和56年(1981)4月20日

発明の数 1

<54>海苔剥ぎ機

<21>特願 昭54-128293

<22>出願 昭51(1976)10月12日

公開 昭55-111775

<43>昭55(1980)8月28日

<62>特願 昭51-123353の分割

<72>発明者 川島定美

福岡県山門郡三橋町棚町990

<71>出願人 川島定美

福岡県山門郡三橋町棚町990

<74>代理人 弁理士 藤井信行

<57>特許請求の範囲

1 多孔移動ベルト6を機枠1に支持し、同ベルト6の上面に空気吸引口7を接し、同ベルト6および空気吸引口7の直下に同ベルト6の移動方向と逆方向に向つて移動する海苔簀牽引爪15を機枠1に設けてなる海苔剥ぎ機。

2 海苔簀牽引爪15を無端回動ベルト10に設けた特許請求の範囲第1項記載の海苔剥ぎ機。

3 多孔移動ベルト6の移動速度よりも海苔簀牽引爪15の移動速度が大である特許請求の範囲第1項記載の海苔剥ぎ機。

発明の詳細な説明

本発明は多孔移動ベルトを機枠に支持し、同ベルトの上面に空気吸引口を接し、同ベルトおよび空気吸引口の直下に同ベルトの移動方向と逆方向に向つて移動する海苔簀牽引爪を機枠に設けてなる海苔剥ぎ機に関するものであつて乾燥海苔抄着簀から自動的に円滑確実に乾燥海苔を剥ぎ取ることを目的とするものである。

本発明を図面に示す実施例について説明すると、機枠1にローラー2、3、4および駆動ローラー5を軸支し、これらのローラー2、3、4、5にゴム製無端多孔移動ベルト6を掛渡し、同ベルト6を水平方向(矢印a方向)に移動させるものである。この水平方向移動ベルト6の上面には空気吸引口7を接しダクト8を介してこれを吸引ブロワー(図示していない)に接続するものである。駆動ローラー5には水平方向移動ベルト6の両側に回動板9、9を設け同回動板9、9の外周面に無数の凹凸を形成し海苔簀下降誘導装置となすものである。上記空気吸引口7および水平方向移動ベルト6の直下には同ベルト6の中央部をその移動方向(矢印a方向)と逆方向に向つて移動する無端回動ベルト10を配設する。この回動ベルト10は機枠1に軸支した駆動調車11および案内調車12、13、14に掛渡され、同ベルト10の2個所にそれぞれ3個宛の海苔簀牽引爪15を突設する。そして上記水平方向移動ベルト6の移動速度(矢印a方向)よりも回動ベルト10の移動速度(矢印b方向)を2倍に増加し爪15の移動速度を大となすものである。尚図中16、17で示すものは原料海苔簀供給ベルト、18、19、20、21は同ベルト16、17用調車、22は海苔簀支持ローラー、23は同ローラー22に対接する海苔簀感知用スポンジローラー、24、25は海苔簀の先端部牽引ローラーであつて第1図実線位置から仮想線位置まで簀先端部を挾持して移動することができる。26は調車14の両側に軸支した海苔簀分離取卸用高速大径歯車、27は海苔簀受板、28は取卸海苔簀集積台、29は同台28の支持発条、30は減速原動機、31は駆動調車軸に設けた駆動用2重スプロケツト、32は駆動ローラー5に設けた水平移動ベルト減速駆動スプロケツト、33は減速原動機30の駆動スプロケツト、34はスプロケツト31、33に掛渡した駆動用チエン、35はスプロケツト31、32に掛渡した減速チエン、36は剥離海苔搬出コンベヤーである。

従つて供給ベルト16、17に挟持されて水平方向多孔移動ベルト6の下面に供給された乾燥海苔抄着簀(原料海苔簀)37は空気吸引口7の吸引力によつてベルト6の下面に吸着し同ベルト6の移動に伴つて矢印a方向に移動する。そしてその先端部が矢印c方向に回動している回動板9、9によつて下方に誘導されて下降しベルト6から分離垂下し、その垂下部37’が矢印b方向に移動する爪15に引掛けられ同垂下部37’を多孔移動ベルト6の移動方向と逆方向に牽引し簀37をベルト6に吸着している海苔38から分離することができる。

従来抄着海苔が牽引される方向と同一方向に海苔簀を牽引したので抄着海苔破れる率が高く海苔剥ぎ機実用化し難い欠陥があつたが本発明は上述のように構成したので海苔38を簀37から剥ぎ取るに際し、抄着海苔38に圧縮力が作用するので海苔38に裂傷を発生するおそれがなく自動的多量に抄着海苔38を簀37から円滑確実に剥ぎ取り得る効果がある。

図面の簡単な説明

第1図は本発明の海苔剥ぎ機を示す側面図、第2図は平面図である。

6……多孔移動ベルト、1……機枠、7……空気吸引口、15……海苔簀牽引爪、10……無端ベルト、9……回動板。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

(別紙二)

<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告

<12>特許公報(B2) 昭54-22506

<51>Int.Cl.2A 23 L 1/337 識別記号 103 <52>日本分類 35 B 122 庁内整理番号 6714-4B <24><44>公告 昭和54年(1979)8月7日

発明の数 2

<54>海苔・す分離方法と装置

<21>特願 昭53-23090

<22>出願 昭46(1971)10月1日

公開 昭53-139771

<43>昭53(1978)12月6日

追加の特許出願(特願昭46-65673)を独立の特許出願に変更

<72>発明者 出願人に同じ

<71>出願人 建部洋

東海市横須賀町浜屋敷9の1

<74>代理人 弁理士 飯田堅太郎

<57>特許請求の範囲

1 コンベヤ上にすと共に載置され予備剥ぎされた海苔の剥離端部を真空吸着する方法と、前記真空吸着した海苔を送りローラで挾持して所定場所へ送る搬送方法とから成ることを特徴とする海苔す分離方法。

2 す送り用のコンベヤ1の一端側上部に孔あきエンドレスベルト15の一端側を重ねておき、重ね部分側のコンベヤ1の端部ローラ6上方の孔あきエンドレスベルト15の下部走行部上に真空吸引装置12を配設すると共に、該真空吸引装置12の前方の下部走行部下に海苔送りローラ16を設けたことを特徴とする海苔・す分離装置。

発明の詳細な説明

この発明は海苔の製造に際し、すに海苔を展開して乾燥した後、すより海苔板を剥離する方法と装置に関する。

各々の端部で重なり合うようにした2つのベルトコンベヤを配し、周速度の異なるローラですを押えつつ運搬しながらすを180°急激に方向転換させて海苔端部を剥離し、この海苔の剥離端部を真空吸着して剥離の促進と、海苔の送給を行なうようにしたものが、本発明者によつて先に出願されているが、真空吸着して海苔を剥離、送給するのに孔あき回転ドラムを使用したものにおいては海苔の「す」よりの剥離後の送り出しがスムーズに行かない難点があつた。

この発明は上記にかんがみて、さらに有効な真空吸着手段によつて海苔の剥離と送給を確実に行なうようにさらに改良したものである。

この発明の構成夏旨は、す搬送用のベルトコンベヤ1の一端側上部において、す押えベルトの一部を重合させると共に、押えベルトローラの周速度より周速度の若干早いローラを設けて、ローラの速度差によつてすより海苔を剥離して、海苔だけを真空吸引装置によつて海苔運搬ベルトに吸着させて海苔送りローラで挾持して送給するものである。

以下図例について説明すると、す運搬用コンベヤ1の両側端に定速走行する押えベルト9、9の定速回転ローラ4、4を当接し、ベルト9、9の下部をコンベヤ1に重ね、コンベヤ1の小ローラ6を経て下方に延び2つの対向するガイドローラ13、14の間を通つてベルト9、9をローラ7を介して方向転換させローラ8を介してエンドレスに構成されている。ローラ4、4とコンベヤ1の小ローラ6間には定速回転ローラ4、4よう周速度の若干早いす押えローラ5、5をす2上に展開した海苔3に掛からない位置で配置し、さらに海苔3を押えるように孔あきエンドレスベルト15の一側端をコンベヤ1上に重ねて配設し、孔あきエンドレスベルト15の他側端はコンベヤ1とは反対方向に延設して、コンベヤ1の小ローラ6、すなわち、ベルト9、9の屈折部上方に位置する孔あきエンドレスベルト15の下部ベルト上部に真空吸引装置12を設け、真空吸引装置12の近傍の孔あきエンドレスベルト15の下部ベルト下部に海苔送りローラ16を設けている。尚コンベヤ1、ベルト9、9、ローラ5、海苔送りローラ16は1つのモータまたはそれ以上のモータと減速装置を使用して駆動されるものであるがその伝導詳細部は図示されていない。10は孔あきエンドレスコンベヤ15の後方下部に斜設した海苔ガイド板、11はすガイド板である。

この発明の作用は、図においてコンベヤ1の左方より海苔3を展開して乾燥固着したす2が載せられると装置の右方へと送られ、ベルト9、9のローラ4、4です2の両側を押えられて運ばれ、す2の前端が押えローラ5、5に達して押えられると、該ローラ5、5の周速度がローラ4、4の周速度より早いためにす2のこの部分が引張られてすの目が延び、これによつて該部分の海苔がすより順次剥離し、孔あきエンドレスベルト15とコンベヤ1に挾まれて送られるが、すは小ローラ6、6を経て2つのガイドローラ13、14で下方に引張られて方向転換してガイド板11より所定の場所へ運ばれる。一方すより剥離されて送られて海苔は真空吸引装置12で孔あきエンドレスベルト15に吸い寄せられ、さらに海苔送りローラ16に挾持されて前へ送られ、海苔後端が海苔送りローラ16を通過して落下し、海苔ガイド板10で所定の場所に集積される。

この発明は上記のようにすの屈折部上方に真空吸引装置を設け、海苔送りローラ16で剥離後の海苔を送るようにしたので海苔に傷をつけないで送給が確実に行なえることが可能となつた。

この発明は、上記のほか、この発明の技術的思想の範囲内において設計変更を許し得ることは論をまたない。

図面の簡単な説明

図は本発明の一実施例を示し、第1図は要部の斜視図、第2図は同じく側面図、第3図は平面図である。

1……す搬送用コンベヤ、4、4……定速回転ローラ、5、5……す押えローラ、9、9……す押えベルト、12……真空吸引装置、15……孔あきベルト、16……海苔送りローラ。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

(別紙三)

昭和53年特許願第23090号(特公昭54-22506号、〔JPC35B122〕、昭54.8.7発行の特許公報2(4)-21〔332〕号掲載)については特許法第64条の規定による補正があつたので下記のとおり掲載する。

特許第1071034号

Int.Cl.3A 23 L 1/337 識別記号 103 庁内整理番号 7822-4B

1 「発明の名称」の項を、「海苔、す分離装置」と補正する。

2 「特許請求の範囲」の項を「1す送り用のコンベヤ上に載置されて送られてきた海苔が付着したすを、すは進行方向と反対の方向にさせて移送し、海苔は進行方向へ送り出してすから海苔を分離する装置において、す送り用のコンベヤ1の一端側上部に孔あきエンドレスベルト15の一端側を重ねておき、重ね部分側のコンベヤ1の端部ローラ6上方の孔あきエンドレスベルト15の下部走行部上に真空吸引装置12を配設すると共に、該真空吸引装置12の前方の下部走行部下に海苔送りローラ15を設けたことをとする海苔・す分離装置。」と願正する。

3 「発明のな説明」の項を「この発明に海苔の製造にし、すに海苔をして乾燥した後、すより海苔板を剥離する装置に関する。

各々の端部で重なり合うこようにした2つのベルトコンベヤを配し、周速度の異なるローラですをえつつ設しながらすを180°急に方向転換させて海苔端部を剥離し、この海苔の剥離端部を真空吸着して剥離の促進と、海苔の送給を行なうようにしたものが、本発明者にこつて先に出願されているが、真空吸着して海苔を剥離、送給するのに孔あき回転ドラムを使用したものにおいては海苔の「す」よりの剥離後の送り出がスムーズに行かない点があつた。

この発明は上記にかんがみて、さらに有効な真空吸着手段によつて海苔の剥離き送給を確実に行なうようにさらに改良したものである。

この発明の構成要旨は、す送り用のコンベヤ上に載置されて送られてきた海苔が付着したすを、すに行方向と反対の方向に転換させて移送し、海苔は進行方向へ送り出してすから海苔を分離する置において、す送り用のコンベヤの一端側上部に孔あきエンドレスベルトの一端側を重ねておき、重ね部分側のコンベヤの端部ローラ上方の孔あきエンドレスベルトの下記走行部上に真空吸引装置を配設するとに、該真空吸引装置の前方の下部走行部下に海苔送りローラを設け、海苔だけを真空吸引装置によつて海苔運搬ベルト(孔あきエンドレスベルト)に吸着させて海苔送りローラで扶持して送給するものである。

以下図例について説明すると、す送り用のコンベヤ1の両側端に定速走行する押えベルト9、9の定速回転ローラ4、4を当接し、ベルト9、9の下部をコンベヤ1に重ね、コンベヤ1の小ローラ6を経て下方に延び2つの対向するガイドローラ13、14の間を通つてベルト9、9をローラ7を介して方向転換させローラ8を介してエンドレスに構成されている。ローラ4、4とコンベヤ1の小ローラ6間には定速回転ローラ4、4より周速度の若干早いす押えローラ5、5をす2上に展開した海苔3に掛からない位置で配置し、さらに海苔3を押えるように回動する孔あきエンドレスベルト15の一側端をコンベヤ1上に重ねて配設し、孔あきエンドレスベルト15の他側端はコンベヤ1とは反対方向に延設して、コンベヤ1の小ローラ6、すなわち、ベルト9、9の屈折部上方に位置する孔あきエンドレスベルト15の下部ベルト上部に真空吸引装置12を設け、真空吸引装置12の近の孔あきエンドレスベルト15の下部ベルト下部に海苔送りローラ16を設けている。尚コンベヤ1、ベルト9、9、ローラ5、海苔送りローラ16及び、孔あきエンドレスベルト15は1つのモータまたはそれ以上のモータと減速装置を使用して駆動されるものであるかその伝導詳細部は図示されていない。10に孔あきエンドレスベルト15の後方下部に斜設した海苔ガイト板、11はすガイト板である。

この発明の作用は、図においてコンベヤ1の左方より海苔3を展開して乾燥回着したす2が載せられると装置の右方へと送られ、ベルト9、9のローラ4、4です2の両側を押えられてばれ、す2の前端が押えローラ5、5にし押えられると、該ローラ5、5の周速度がローラ4、4の周速度より早いためにす2のこの部分が引張られてすの目が延び、これによつて該部分の海苔がすより順次剥離し、孔あきエンドレスベルト15とコンベヤ1にきれて送られるが、すは小ローラ6、6をて2つのガイドローラ13、14で下方に引張られて方向転換してガイド板11より所定の場所へばれる。一方すより剥離されて送られて海苔は真空吸引装置12で孔あきエンドレスベルト15に吸いせられ、さらに海苔送りローラ16に扶持されて前へ送られ、海苔後端が海苔送りローラ16をして落下し、海苔ガイト板10で所定の場所に集積される。

この発明は上記のようにすの屈折部上方に真空吸引装置を設け、海苔送りローラ16で剥離後の海苔を送るようにしたので海苔にをつけないで送給が確実に行なえることが可能とたつた。

この発明は、上記のほか、この発明の技術的思想の範囲内において設計を許し得ることはをたない。」と補正する。

4 「図面の簡単な説明」の項を「図は本発明の一実施例を示し、第1図は部の斜視図、第2図は同じく側面図、第3図は平面図である。

、1……す搬送用コンベヤ、4、4……定速回転ローラ、5、5……す押えローラ、9、9……す押えベルト、12……真空吸引装置、15……孔あきエンドレスベルト、16……海苔送りローラ。」と正する。

期間別販売台数表

特許 期間 販売台数 イ号機械 中古械 ロ号機械 中古機 合計

B 54.8.7~55.8.6(原告建部単独) 693 12 非該当 非該当 705 55.8.7~56.4.19(原告建部・原告会社) 9 28 非該当 非該当 37

A 56.4.20~57.2.14(原告川島単独) 0 25 115 2 142 57.2.15~(原告3名共有) 0 41 45 4 90

合計 702 106 160 6 974

注) 中古機は外数である。

特許公報

<省略>

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特許公報

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